マーケティング活動のベースとなるカスタマージャーニーマップ 作成手順のポイントとその効果

この数年で、マーケティングに欠かせないツールというイメージが定着した「カスタマージャーニーマップ」。耳にする機会は多いものの、それが自社に役に立つかどうか分からないというWeb担当者やマーケターもいることでしょう。具体的にどのようなもので何の役に立つのかを整理し、作成の手順を解説します。

カスタマージャーニーマップとは

自社の商品やサービスは、どこでどのように知られ、どういう理由で購入・利用されているのか、きちんと把握しているでしょうか。また、これから行うキャンペーンで、ユーザーにどのように行動してもらい、どのような気持ちになってもらいたいかきちんと設計済みでしょうか。期待される顧客の行動や心の動きを、一枚の図に整理したのが「カスタマージャーニーマップ」です。Webサイトの改善やマーケティング活動には、このカスタマージャーニーマップが役に立ちます。

カスタマージャーニーマップとは、期待される顧客の動きを一覧表や図にしたものです。フォーマットはいろいろありますが、顧客のフェーズ、顧客接点、顧客の行動、顧客の思考や感情を時間の流れに沿って書き出し、そこに課題や施策を当てはめていきます。顧客を時間軸で追うので「ジャーニー」という言葉を使い、考え方としては顧客を個別の接点ではなく流れで把握するということになります。なぜなら、一つだけの接点に注目して改善しても、最終的な会社としての目標にたどり着かなければ意味がないからです。

例えば、ある企業がWebサイト上で何かのキャンペーンをするとしましょう。そのキャンペーンだけに注目すれば、アクセス数を伸ばす方法はいくらでもあります。「アクセスした方にもれなく○○ギフトカードをプレゼント」とすれば、あっという間に目標数に達するはずです。しかし、それが自社の何に役立つでしょう(名前は覚えてもらえるかもしれませんが)。

まず、何のためにどういうユーザーを得たいのか具体的なターゲット(ペルソナ)を考え、そのペルソナが「認知」→「情報収集」→「コンバージョン」→「継続的な関係」というステージを進むにはどのようなシーンでどのように接触するのが良いのか、全体像を把握しなければなりません。そのうえで、どこに問題があるのか、それをどう改善するのかと考える必要があるのです。

カスタマージャーニーマップを作る目的は、顧客の心理・行動を把握し、接点を改善・最適化するということです。そのために、現状あるべき姿を書き出す必要があります。作り方の手順としては、以下の5つのステップがあります。

カスタマージャーニーマップの作成手順

【ステップ1】商品、コンテンツ、キャンペーンなどの企画する

【ステップ2】ユーザー体験を5W1Hに分解し、シーンごとにユーザーの行動、気持ちを想定する

【ステップ3】想定で不確かな状況はユーザーへの定量、定性調査で確認して具体化する

【ステップ4】調査データを元にブレーンストーミングでユーザー行動の文脈を明らかにする

【ステップ5】マップ化

より詳細な進行手順

実際の進行手順としては、以下の8ステップに分けることもあります。

【1】テーマを決める(ステップ1)

【2】ペルソナを設定する(ステップ1)

【3】行動を洗い出す(ステップ2、3)

【4】行動をステージに分ける(ステップ2)

【5】顧客接点を明確にする(ステップ2)

【6】感情の起伏を想像する(ステップ2)

【7】対応策を考える(ステップ4)

【8】視点を変えてアイデアを追加する(ステップ4)

BtoCのカスタマージャーニーマップ

顧客が段階を追って最終的なコンバージョンに至る流れといえば、AIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)といった言葉を思い出す人もいるでしょう。

AIDMAは消費者の購買決定プロセスを説明するモデルの一つで、「消費者はまず、その製品の存在を知り(Attention)、興味をもち(Interest )、欲しいと思うようになり(Desire)、記憶して(Memory)、最終的に購買行動に至る(Action)」という考え方です。

AISASはネットでの購買行動のプロセスモデルで、電通が提唱しました。それぞれ、以下の言葉の頭文字を取っています。

「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動、購入)」「Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)」

これらの言葉は消費者の行動をよく表現していますが、最近はモバイルやSNSの普及、OtoO(Online to Offline、電子クーポンなどネットと実店舗の連携)の広がりなど、ユーザー行動が複雑化しています。このため、カスタマージャーニーマップを作成してより明確に整理する必要があるのです。

カスタマージャーニーマップを作る手順について、化粧品を例にとって考えてみましょう。

1.認知、情報収集、購入、リピート購入という4つのフェーズで、ユーザーがどのような体験をするか、付箋などに書いて貼り付けていく。

2.それぞれの体験に矢印をつけ、流れを整理する。

3.そのときの感情を予想して書き出す。

4.フェーズごとの対応策を書く。

このとき、「状態」そのものよりも「変化」に注目するのがポイントです。あるフェーズから次のフェーズに移るときに、企業が主観的に分析するのではなく客観的なデータを使って、顧客の行動や気持ちを推測することが重要です。

BtoBのカスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップは、BtoBでも重要です。カスタマージャーニーマップがないということは、顧客企業の購買プロセスを理解していないということになります。それではマーケティングの仮説を立てることもできません。

もちろん、BtoCとBtoBでは違いがあります。一つは、ペルソナの違いです。BtoCの場合は個人ペルソナですが、BtoBの場合は企業ペルソナと、キーマンのペルソナの2つが必要になります。個人ペルソナでは基本属性やライフスタイルなどに注目しますが、企業ペルソナでは例えば従業員規模や決算月、企業風土などに注目する必要があります。

さらに、BtoBの場合は関与者が多いのも特徴です。例えば、その製品やサービスを直接利用する「使用者」と「購買担当者」が別であることも多く、さらにその上に「意思決定者」がいる場合もあります。予算規模によって決裁権者が違うため、キーマンが誰になるかは、商材によって異なります。BtoBでは以下のような手順が必要です。

1.購買プロセスの整理と、関与者の特定。

2.顧客の動きの仮説を作る。

BtoBの場合は、顧客接点が広告、Web、営業、イベントなど複数にまたがっていることが多いので、どのような経路をたどらせるかという設計が特に重要になります。前後の文脈を理解し、複数のチャネルにおいて顧客が求めるタイミングで接点を築くことがポイントです。

拡張されたカスタマージャーニーマップ

ここまで、カスタマージャーニーを「認知」のフェーズから始めました。しかし、何かを買うと決めた後で自社製品を知ってもらっても、そこでの勝負は単純な価格競争になってしまうこともあります。今は、価格比較サイトなどで簡単に最安値を見つけられる時代です。

そこで、もしコンテンツマーケティングなどで顧客を増やしたいと思うなら、カスタマージャーニーをもっと前の段階まで拡張する必要があります。つまり、そもそもその分野の商品が欲しいと思わせるきっかけ作りをするということです。ユーザー行動が十分想定できたと思ったら、自社製品が必要になるのはどういうときなのか、そこまで遡った拡張されたカスタマージャーニーマップにチャレンジしてみてください。

また、カスタマージャーニーは顧客全体の平均値になるので、BtoCの場合は具体的な施策まで落とし込むのが難しいこともあるでしょう。その場合は、ユーザーへの定量、定性調査で得た個々のユーザーの現状を見て、具体的な改善策を考えると効果をあげやすくなります。

カスタマージャーニーマップはマーケティングの基本

カスタマージャーニーマップを作るとは、顧客体験を一連の流れとして捉え、改善すべき接点を明らかにすることです。作り方の基本ステップを押さえておけば、作成は難しくありません。マーケティング活動のベースになるカスタマージャーニーマップは、BtoCだけでなくBtoBでも効果があります。