Webサイトリニューアルで失敗しないための要件定義書の作り方

Webサイトリニューアルは頻繁に行うものではないので、「やり方はよく分かっている」「慣れている」という人は少ないでしょう。始めたものの、あちこちから意見が出始めて収拾がつかなくなったり、想定より作業量・修正箇所が増えてしまったりすることもあります。そしてリニューアル期間が長くなりすぎると、「何のためにリニューアルをするのか」や「ゴールはどこなのか」が分からなくなってしまうものです。そうならないために必要なのが、しっかりとした「要件定義書」です。その作成方法と、リニューアルを成功させるポイントを説明します。

Webサイトリニューアルを成功させるには

Webサイトリニューアルというと、見た目のデザインやユーザビリティ(分かりやすさ、使いやすさ)、新しい機能などに意識が行きがちです。しかし、本当に重要なのは「何のためにリニューアルするのか」「Webサイトをリニューアルしたことで、会社がどうなるべきなのか」ということです。

Webサイトのリニューアル経験が豊富という方は少ないでしょうから、進め方が分からないという担当者もいると思います。リニューアルは、以下のようなプロセスで進めます。

  1. ヒアリング
  2. 課題設定
  3. 仮説立案
  4. 設計
  5. デザイン
  6. ページ制作
  7. 確認

これを見て分かるように、デザインや機能について考えるのは、プロセスの4から5番目。まずしなければいけないのは、現状の課題や目標・目的を洗い出し、解決すべき課題として設定すること。そして、課題解決のためにはどうすればいいかという仮説を立案することです。この1から3までの作業が「要件定義」です。

要件定義とは、平たく言えば「誰に対して」「何を見せて」「どうなってもらうための」Webサイトなのかを決めることです。「誰に」とは、リニューアル後のターゲットはどのような人たちかということ。「何を」とは、ユーザーにどのようなコンテンツを見せるか、どのような体験をしてもらうかということ。「どうなって」というのは、見た/体験したことによって、ユーザーにどのようなアクションを起こしてもらうかということです。

要件定義をおろそかにすると、実際の構築フェーズに入ってから各所からいろいろな要望や意見が出て、話がまとまらなくなる可能性もあります。「何のために」「何をするのか」「何をしないのか」。これらを明確にしておけば、あとから出てきた意見に右往左往することはありません。急がば回れ、Webリニューアルを成功させるためには、しっかりと要件定義することが重要です。

要件定義で盛り込むべきこと

要件定義書は、設計以降の作業を行うための基盤となるものです。その中には、以下の2つの項目が盛り込まれている必要があります。

(1)条件

一般的に要件定義というと、こちらのイメージかもしれません。以下のような点で具体的な条件を決めておく必要があります。

  • リニューアル範囲
  • スケジュール
  • 予算
  • インフラ環境
  • システム(CMSなど)

範囲やスケジュール、予算が決まっていれば、あとから出てきた意見に対して「それは今回はやりません」とはっきり言うこともできます。また、インフラやCMSなどのシステムについても、この段階で決めておけばその後の設計の段階で迷わずにすみます。全体的な予算を決めて、どの部分にはお金をかけ、どの部分は節約するかなどの方針も、あらかじめ決めておきましょう。

(2)コンセプト

条件と同様にしっかりと決めておかなければならないのが、リニューアルのコンセプトです。具体的には以下のような点を明確にしておく必要があります。

  • リニューアルの目的
  • Webサイトのイメージ、世界観など
  • Web施策
  • 設計方針
  • 運用方針

Webリニューアルは、あくまでも手段であってそれ自体が目的ではありません。企業としてありたい姿を実現することが目的で、そのための手段がコンテンツや情報設計、デザインを工夫するサイトリニューアルです。また、目指す姿を実現するためには、リニューアル完了後の運用も重要になります。このため、運用も含めて要件定義の段階で詰めておくことが、リニューアルを成功させるコツです。

要件定義の進め方

要件定義のための作業をステップごとに解説します。

Step1.課題整理

まず、社内へのヒアリングやログ分析、競合他社の状況分析など、現状把握のための材料集めをします。考え方としては、中期ビジョンのような経営課題、マーケティング戦略のようなマーケティング課題、Web上の課題など、多方向から考えるのがポイントです。

経営層からは、Web担当者では分からない企業の将来像を思い描いた意見が聞けるでしょうし、それがリニューアルの方向性のベースになります。さらには、トップの肝いりだということで、プロジェクトメンバーのモチベーションアップにもつながります。営業には営業の、マーケティングにはマーケティングの課題があるでしょうし、運用負荷のようなWeb担当者の悩みもあるでしょう。また、ユーザー調査といったことができればさらに効果的です。

さまざまな分野の課題を収集したらリスト化し、「コンテンツ」「UI/UX」「プラットフォーム・ガバナンス」のようにカテゴリ分けします。さらに、整理した課題は、緊急度やテーマの重要性、予算、スケジュール、プラットフォームやコンテンツの条件などで優先順位をつけます。

Step2.仮説立案

課題整理ができたら、Webリニューアルのゴールを考え、「誰に何を見せてどうなってもらう」という仮説を立てます。具体的には、ペルソナやカスタマージャーニーマップ、ユーザーシナリオなどを考えていく必要があります。それに基づいてゴールを設定し、施策を検討します。

例えば、「リード獲得型のサイトにして新規の見込み顧客を増やす」というゴールだとしたら、「UI/UXを改善してサイト内で迷わないようにする」や「顧客接点の強化で集客を増やす」など、アプローチの方法はいくつかあります。それぞれ、動線の改善やリードコンテンツの新設など、具体的な施策が思いつくでしょう。

Step3.合意形成

ペルソナやカスタマージャーニーマップなどを考える際にはワークショップを開くことが一般的ですが、仮説立案自体でも、他部署を巻き込んで意見を出し合うとスムーズに進むことがあります。会議を設定するのは面倒な面もありますが、あとからあれもこれもと要望を出される前にあらかじめ意見を出し合うという意味でもメリットがあり、気づきや相互理解が促進されて結果的にスピード感が得られるのでおすすめです。

Step4.文書化

要件定義が固まったら、リニューアルの目的、ターゲット、施策、条件、個別の施策を設計するための方針などを要件定義書として文書化しておきます。これが、その後の設計や制作段階で迷ったら立ち戻る場所です。

目的や方向性に加えてインフラも重要

Webサイトリニューアルの要件定義では、会社が示す方向性と合致しているか、自社の顧客の期待に応えているか、企画に一貫性はあるかといったことがポイントです。また、企業サイトのリニューアル時は、運用体制や運用レベルをインフラ環境も含めて考え直す時期でもあります。リニューアル後の運用効率化のためには、CMSや柔軟なインフラの導入が欠かせません。